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投稿日 2025年 03月 28日
目次
本レポートでは、米国のステーブルコイン関連規制の最新動向について、具体的な法案内容や監督当局の会計指針を概観し、今後の市場インパクトを考察します。
2025年時点の米国では、暗号資産や米国債を裏付けとする「トークン化資産(Tokenized Assets)」がさらに拡大し、米ドルおよび他資産のデジタル・トークン化が注目を集めています。
同時に、米国内でもトランプ大統領が就任し、クリプト全体に対する積極的かつ緩和的な姿勢への転換、また、米ドルを裏付けとするステーブルコインの規制整備を後押しする意向が示されています。
そうした中、米国証券取引委員会(SEC)の会計指針であるSAB 121/122をはじめ、銀行や非銀行がステーブルコインを発行・カストディする際のライセンス取得や裏付資産要件に関する諸法案(たとえばSTABLE Act of 2025やGENIUS Act of 2025など)が提出され、議会審議が活発化しています。
本稿では、こうした規制整備の流れが、米国内でのステーブルコイン発行ビジネスや銀行によるデジタル資産サービスにどのような影響をもたらすか、SEC会計指針と法案の関連づけも含めて整理します。
以下は、本レポートで取り上げる規制に関連するステーブルコイン・トークン化ファンドの代表的なプロダクトの基本情報となります。
ステーブルコイン(トークン化国債) | 発行体 | 発行体の所在地 | カストディ | 規制当局 | 準備金構成の内訳 |
---|---|---|---|---|---|
Tether (USDT) | Tether Limited | 香港(本社)、英領ヴァージン諸島(登記) | Tether Limitedが管理 | 明確な監督なし。過去にNYAG、CFTCから罰金 | 現金および現金同等物(約82%)、その他投資・資産(18%)(参照) |
USD Coin (USDC) | Circle Internet Financial, Ltd. | ボストン、マサチューセッツ州、米国 | BNY Mellonがカストディ | NYDFS、FinCEN。MiCA対応 | 現金および短期米国債(参照:月次データ) |
Paxos USD (USDP) | Paxos Trust Company | ニューヨーク市、米国 | 米国預金機関の分離口座で管理 | NYDFS、シンガポール金融庁(MAS) | 100%現金および現金同等物(参照:月次報告書) |
BlackRock (BUIDL) | BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund | 米国(本社)、英領ヴァージン諸島(ファンド登記) | BNY Mellon(ファンド) | SEC(米国証券取引委員会) | 短期米国債およびその他の高品質資産(参照) |
上記の比較表では、オフショアのステーブルコインとしてUSDT、オンショアのステーブルコインとしてUSDC、USDP、Ethereumで初めてのトークン化ファンドとしてBUIDLを取り上げています。
いずれも、裏付けに米国債のエクスポージャーを持つという点では大きな差異はありませんが、用途や発行形態、規制管轄等に大きな差異が存在しています。
レポート前半では、米国における規制環境の変化について解説を行い、後半で上記のステーブルコインに対する規制への該当性についても解説していきます。
米国における暗号資産カストディの会計上の取り扱いには、米国証券取引委員会(SEC)のスタッフが発行する「SAB(Staff Accounting Bulletin)」が大きな影響を及ぼしています。
SABは公的な会計基準(US GAAP)そのものではありませんが、監査法人やSECのレビューにおいて 「実務上従うべき解釈ガイダンス」 と位置づけられており、事実上、遵守が強く求められる文書です。
SAB 121、SAB 122は、直接的にステーブルコインの発行要件を定めた法案ではないものの、顧客資産のカストディや決済型ステーブルコイン発行などのビジネスへの銀行の参入要件を緩和する指針として、間接的な影響をもたらす非常に重要な変更となっています。
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