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投稿日 2023年 12月 06日
目次
翻訳元記事 : UPTN Project: SK Planet's Arc Reactor
映画『アイアンマン1』で、主人公のトニー・スタークはテロリストの攻撃で心臓に砲弾の破片が刺さり、死の危機に直面する。トニーが気を失っている間に、同じく拉致されていた科学者のホー・インセンは、トニーを救命するために彼の胸に電磁石を取り付ける。
その後、トニーはホーの協力を得てエネルギーを生み出す熱プラズマ反応炉「アーク・リアクター」を作り、胸の電磁石をアーク・リアクターに取り替えることで自らの命を救った。まさにアイアンマン誕生の背景である。
さて、UPTNプロジェクトはSK Planetの「アーク・リアクター」になれるだろうか?
本稿は大きく2つのパートからなる。
前半では、SK Planetという企業についての簡単な分析とSK PlanetがUPTNプロジェクトを推進することになった背景、ビジネスの方向性、そして期待効果について紹介する。
後半では、オンチェーンデータを基にビジネス現状を分析し、長期的な観点からUPTNプロジェクトの可能性を探る。
SK Planetは、SKグループ傘下のデータビジネスソリューションおよびO2Oマーケティングプラットフォーム企業であり、2011年10月、SK Telecomからプラットフォーム事業部門が分社したことで誕生した。
現在、SK Planetの株主構成は、SK Squareが98.65%、自社株が1.35%となっており、2023年9月にWemadeが戦略的パートナーシップを目的にSK Planetの株を12%取得する予定である。
SK Planetは、大きくIoT (RB Insight)、Media (RB Cloud) 、AI (RB Dialog)、MNOなど多様な分野のB2Bビジネスソリューションを提供するBusiness Solution事業部と、OK CashbagやSyrup Walletなどマーケティングサービスを運営するMarketing Platform事業部からなる。本稿で集中的に取り上げるサービスは、マーケティングプラットフォーム事業部が展開するOK CashbagとSyrup Walletサービスである。
OK Cashbagは、ユーザーがイベント参加やサービス決済を通じてポイントを貯めて多様な特典を享受できるマイレージベースのマーケティングソリューションである。OK Cashbagは、飲食、化粧品、アパレル、文具、映画、カルチャーコンテンツなど多様な分野で9万3千店に至る加盟店を抱えており、韓国最大の加盟店数を誇る。
OK Cashbagのユーザー数は2,100万人で、そのうち月間利用者数(MAU)は約700万人と集計される。Syrupは、デビットカードや各種メンバーシップカード、クーポン、交通系カードなどを1つのアプリで管理・保存できるサービスで、ユーザー数は1,500万人、MAUは600万人に至る。
Source: SK Planet
OK Cashbagの基本的な収益構造は、ユーザーと加盟店をつなぐマーケティングプラットフォームを運営することで、両方から取得するポイント手数料である。
加盟店:ユーザーがOK Cashbag加盟店で消費活動をしてOK Cashbagポイントを貯める際に、店舗は、1) 消費者に付与されるポイントと、2) 貯めたポイントの25%に当たる加盟手数料をSK Planetに支払う。加盟手数料はSK Planetの収益となり、ユーザーが貯めたポイントはSK Planetが預かり、ユーザーが他の加盟店でそのポイントを使用すると使用先に支払う。
この際、保管期間中に発生する利子収益もSK Planetの収益と認識され、ユーザーがポイントを使用せずポイント消滅期限を迎えた場合、その金額もSK Planetの収益となる。
かつては加盟店が決済件別の加盟手数料以外にも加入料と年会費を支払う必要があったが、現在はその政策は廃止されている。
ユーザー:ユーザーは、貯めたOK Cashbagポイントを最初発行加盟店以外の加盟店で使用するたびに貯まったポイントの10%に当たるサービス利用料をSK Planetに支払う。かつては年会費があったが、現在はサービス利用手数料に代替されている。
SK Planetのマーケティングプラットフォーム事業部が運営しているOK Cashbagは、この25年間OK Cashbagの核心要素である「ポイントの汎用性」を基に業界1位となったが、最近成長の限界に直面している。
詳しくは、OK Cashbagは当初、9万店以上の加盟店との提携により、バラバラになっていたポイントを1つの汎用的なポイントにまとめて統合管理する戦略で、2千万人に至るユーザー数を確保した。
しかし、時間が経つにつれて、
1) ユーザー・加盟店離れが進み、競合プラットフォームの登場で汎用性が失われ始め、2) 拡張性の面で従来のポイント構造の限界に達した。
一例として、大手スーパーマーケット企業のHomeplusは2020年、OK Cashbagポイントの使用提携のみ維持し、付与・交換提携を終了している。その背景には、Homeplusで貯めたポイントを他の加盟店で使用する、いわゆるチェリーピッカー(cherry picker)が増加し、マーケティングや売上拡大の効果が期待を下回ったことがある。一方で、Homeplusは自社のメンバーシップ会員数が600万人を突破するほど成長しており、マーケティング費用を支払ってまでOK Cashbagと提携する必要性がなくなっていた。
さらに、加盟店としては、ポイントに対するデータのトラッキングが不可能なために、OK Cashbagのマーケティング効果を把握できないという点も加盟店離れの原因として指摘されている。
加盟店としては、費用を支払ってユーザーにポイントを与えているのに、当のポイントがどこに使われているかについてのユーザーデータを収集・分析できないなら、あえてOK Cashbagと提携する理由がないと主張している。
このような理由から、時間が経つにつれてOK Cashbagは「加盟店離れ → ポイントの汎用性減少 → ユーザーロックイン(Lock-in)効果の減少 → OK Cashbagサービスの魅力・収益性下落」の悪循環に陥った。
また、サービスを25年間運営してきた結果、ロイヤリティの高いユーザーの年齢が高まっている一方(OK Cashbagの主要ユーザーは30~50代に集中している)、新しいニーズと趣味を持つ若いユーザーは、時代の変化に伴って老朽化したOK Cashbagサービスに相対的に魅力を感じず、加入率が低い傾向がある。
従来のシステムでは若いユーザーの趣味に合った新しい経験を提供するうえで限界があり、加盟店のラインナップも若いユーザーが好む最新のブランドや流行りの店舗ではなく、相対的に人気が落ちている古いブランドが中心になっているためである。
結果としてSK Planetは、2018年の11STREETの人的分割を中心に研究開発費や減価償却費、役務原価といった多様な側面でのコスト削減により、収益性の改善に成功したものの、売上の成長には難航している(下図を参考)。
このような状況を受け、SK Planetはブロックチェーン技術を通じて、1)「サービスのメリット向上 → 新規ユーザー誘引・サービス活性度の増加 → 加盟店離れの防止 → ポイントの汎用性向上」の好循環を作り、2) バリューチェーンを拡大して収益を最大化することで、質的・量的成長の両立を図っている。
広い観点からすると、SK Planetが注目しているブロックチェーンの価値は、大きく以下のとおりである。
汎用性の向上:トークン化されたデータであるNFTの登場により、従来は不可能だったデータの「オンチェーン化」、つまり信頼できるネットワークを通じてデータを所有し、取引することが可能になった。このような概念をOK Cashbagサービスに適用すると、ユーザーは単にアプリの中でポイント・クーポン・チケット・メンバーシップを保存して消費することを超えて、趣味とライフスタイルに合わせて、その特典を金額と関係なく自由に取引できるようになる。信頼できるネットワークを通じて、望まない又は魅力の低いポイント・特典を望むものに簡単に交換できる市場を形成できれば、ユーザーとしてはより積極的にイベントに参加する要因になる。SK Planetとしては、1) ユーザーのメリット・サービス活性度の増加につながることで、加盟店数の増加、つまりポイントの汎用性・広告売上の増加効果を期待でき、2) リセール市場での手数料取得による収益創出が可能になる。
リセール市場に対するデータ分析:NFTとFT(Fungible Token)の誕生に伴い、従来は不可能だったリセール市場に対するオンチェーンデータのトラッキングが可能になる。その結果、消費者の趣味とニーズをより綿密に分析し、さらに細かくサービスを高度化することが可能になる。
バリューチェーンの拡大:NFTビジネスを推進していくと、それを支援するためのブロックチェーン(トランザクションの実行、決済、合意、DA)、ウォレット(保存)、マーケットプレイス(取引)、コミュニティ(ホルダー同士のコミュニケーション)、パブリッシング(他のNFTプロジェクトのオンボーディング)ソリューションなどが必要になる。つまり、十分な資本と人材さえ確保できていれば、NFT技術を基にバリューチェーンの無限な拡大が比較的簡単に可能になり、各コンポーネント同士で連携してシナジー効果を生み出すことができる。実際、UPTNプロジェクトは上述したすべてのサービスを既に公開しているか、公開する予定である(下図を参考)。
他にもブロックチェーンビジネスを続けていく過程で、現時点では予想できなかった新しいuse caseを創出できるチャンスが生まれるものとみられる。インターネットが登場した当初は今日のビジネスモデルが誕生するとは想像もつかなかったように、ブロックチェーンが従来のサービスと融合し、プラットフォーム経済におけるプロトコル経済に発展する日が来ることを期待する。
以上、広い観点でUPTNプロジェクトの方向性について説明した。ここからはSK PlanetがどのようにUPTNプロジェクトを構想しているか、ビジネスの方向性について具体的に紹介する。筆者は、UPTNプロジェクトのロードマップを大きく次の2段階に分類している。
Phase1は、UPTNビジネスを活性化し、エコシステムを構築するための準備段階であり、2024年第3四半期までインフラを構築し、多様なコンテンツを公開することに集中する見込みである。従来はOK CashbagやSyrupなどアプリケーション領域のみでビジネスを展開してきたことに対し、今回はブロックチェーン技術を導入することで、バリューチェーンの拡大を試みる点が注目に値する。具体的に、SK PlanetがPhase1で公開するサービスとその期待効果は大きく以下のとおりである。
UPTNチェーン(インフラ) : UPTNプロジェクトの基礎インフラとなるブロックチェーンであり、OK Cashbagをはじめ今後SKグループが展開している多様なサービスに対応する予定である。UPTNチェーンはAvalancheサブネットである。サブネットは、1) スノーボール(Snowball)合意アルゴリズムに基づく高い拡張性、2) 独自のブロックスペース、3) チェーン設計過程における高い自由度を提供できることが最大のメリットである。Avalancheの技術的な特徴についてより詳しく知りたい方は、『Avalancheのビジョンを描く(1)』をご覧いただきたい。
UPTNステーション(ウォレット) : UPTNステーションは、UPTNチェーンと同様、UPTNプロジェクトの基礎インフラとなるユーザーウォレットである。ユーザーがOK Cashbagサービスで獲得するすべてのNFTとトークンは、UPTNステーションウォレットに保存される。ユーザーの趣味とニーズを盛り込んだデジタルインベントリーに当たる。現在はOK Cashbagのみに対応するが、今後SKグループが展開する他のブロックチェーンサービスと互換する可能性もある。一方、SK Planetは現在、KYC認証済みのOK CashbagユーザーのみにUPTNステーションウォレットを発行している。
Road to Rich NFT(コンテンツ) : Road to Richは、SK Planetの野心作であり、ダイナミックメンバーシップ型のNFTプロジェクトである。Road to Richは、1) キャラクターNFTである「Racky」と、2) TEM NFTの2つの要素からなるが、ホルダーはキャラクターNFTにそれぞれ異なる特典を持つTEM NFTを組み合わせることで、個人のニーズに合わせたパーソナライズ型メンバーシップを構成することができる(下図を参考)。
このようなダイナミックメンバーシップ構造は、あらかじめ決まった特典を一方的に提供するよりは、各個人のニーズに合わせたパーソナライズ型の特典を提供することで、ユーザーロックイン効果を期待できる。ユーザーは、決まった特典よりは、必要に応じて特典を変更できるときによりメリットを感じるためである。加盟店がさらに増えて、より多くの特典を提供できるほどユーザーが感じるメリットは増加するため、時間が経つにつれてこのようなロックイン効果はさらに強まることができる。
SK Planetとしては、売上の多角化や収益性の改善を期待できる。Road to Richは、1) ユーザーがRackyにTEM NFTを頻繁に装着・解除する過程でトランザクション手数料が発生し、2) 欲しいTEM NFTを獲得するためのリセールが活発に行われることで、ロイヤリティ手数料が発生する構造であるためだ。このような構造は、通常のメンバーシップNFTに比べて暗号資産の市況による影響が少ないため、売上の変動性が相対的に低く、収益性を担保する面でも有利である。
チケットNFT(コンテンツ)
チケットの偽造を防止し、リセールで発生するロイヤリティ手数料の獲得やトランザクションデータの分析のために、9月にチケットNFTを公開した。
Phase1で構築したサービスとエコシステムを基に、マーケットプレイスやコミュニティサービスなどを追加し、バリューチェーンを本格的に拡大する時期である。
SK Planetが公式発表したものは、1) ユーザー同士でTEMおよびその他オンボーディングされたNFTを取引できるNFTマーケットプレイスと、2) ライブチャット、掲示板、NFT-gatedサービスなどの機能を搭載したホルダー専用コミュニティであるが、将来的にはパブリッシャー、またはトークン公開時にポイントトークン基盤のDefiビジネスも十分考慮できる見込みである(『SKが歩むWeb3の道、Road to Rich』リポートを参考)。
現に、SK PlanetはT1、Dreamus Company、WIMIXとのパートナーシップを既に発表している。Phase2を越えると、UPTNは単なるマーケティングソリューションを乗り越えて、ファンベースのコミュニティ活動が可能なスーパーアプリに進化できるものと予想される。
exolorerによると、SK PlanetのUPTNステーション加入者数は、6月の1か月間で10万人を突破しており、その後は10%前後の月間成長率(CMGR)を記録し、11月6日現在、計20万人となった。Road to Richサービス公開から5か月で、OK Cashbagが持つ2,100万ユーザーのうち約0.9%をUPTNユーザーに転換させられたわけだ。
SK Planetによると、UPTNステーション加入者のうち20~30代の利用率が7.2%高くなっており、いわゆる「MZ世代(ミレニアル世代(1980年〜1990年代前半生まれの世代)とZ世代(1990年代後半〜2010年頃生まれの世代)を組み合わせた韓国特有の世代分類)」ユーザーを誘引するためのSK Planetの努力が功を奏したといえる。
TEM NFT公開以降のDAU上昇幅も注目に値する。UPTNチェーンの日間トランザクション数は、Road to Richの公開初日と、Wemadeとの戦略的パートナーシップを発表した日(9月18日)以外は1日当たり1千人を下回るなど低迷していた。それもそのはず、当時はウォレットの生成やRackyの発行以外には、ユーザーにできるオンチェーン活動が皆無だったからだ。
ところで、10月27日のTEM NFT公開を機に、ユーザーはRackyにTEMに組み合わせることができるようになり、その結果、DAUも急増している。
現在、1) Booster TEM(OK Cashbagの特典を強化できるNFT)、2) Perks TEM(無料チケット、イベント、割引クーポンなど)、3) Cosmetic TEM(Racky Skins)の計3種類のTEM NFTのうち、Booster TEMとCosmetic TEMのみ非常に制限的に公開されている。にもかかわらず、11月7日に5万DAUを記録したことを考慮すると、今後本格的にPerks TEMが公開されると、DAUは大幅に増える可能性がある。
Source: UPTN Explorer
日間トランザクション数もTEM公開後に27.6万件を記録し、最高値を更新した。10月27日~11月2日の計7日間、約100万件のトランザクションが発生し、同期間中にユーザーは平均して約5.2個のオンチェーンアクションを取った。また、SK Planetによると、従来に比べてユーザーの月平均アプリ訪問率が10.2%増加し、ユーザーのサービス経験の増大効果によってポイントの付与・使用実績も従来に比べて7.4%増加するなど、オン・オフラインでOK Cashbagポイントの使用頻度がより活発になったという。
Source: UPTN Explorer
NFT市場で単一NFTプロジェクトの日間トランザクション数が27.5万件を記録することは稀なケースである。現在のPFPのうち最高のブルーチッププロジェクトと呼ばれるBAYCとAzukiでさえ累積取引回数はそれぞれ24.6万件、16万件に過ぎず、日間平均で約16万件のトランザクションが発生したのはAxie Infinityくらいである(最近10日間平均)。
Road to Richは、NFTが単なるPFPではなく「ユーティリティ」性が与えられたときにはじめて高い活性度を達成できるということを示している。リセールが活発に行われるほどロイヤリティ手数料が多く発生し、NFT発行会社に有利になる。NFT1つ当たりの単価が高いPFPプロジェクトの場合、強気相場ではロイヤリティ収益がたくさん発生するが、現在のような弱気相場では非常に不利である。
一方、上述したようにRoad to Richは、1) ユーザーがRackyにTEM NFTを随時装着・解除する過程でトランザクション手数料が発生し、2) 求めるTEM NFTを獲得するためのリセールが活発に行われるため、PFPに比べて暗号資産の市況による影響が少なく、1) 売上の変動性が相対的に低いうえに、2) 収益性の担保に有利な構造を備えている。
トランザクション数は、DAUと同様にPerks TEM公開後に大幅に増加するものと予想される。もし今後たくさんのTEMが公開され、平均的に1日当たり27.5万件のトランザクションが発生し、そのうちリセールによるトランザクションの割合が20%になると仮定すると、リセールによって発生する年間期待売上(ロイヤリティ手数料)は大体どれくらいになるだろうか?
TEM当たりの平均単価が0.5~1 $AVAXで、OK Cashbagポイント手数料と同様にその10%を手数料として取得すると仮定すると、推定売上は1日当たり2,750~5,500 $AVAX、年間では1M~2M $AVAXとなる。11月7日現在、1 $AVAXの価値が約13ドルであることを考慮すると、年間で13M~26Mドル、ウォン換算で約170~340億ウォンの売上がリセールを通じて発生するという計算になる。
初期インフラ構築費や人件費、サービス運営費を含めて発生している主なマーケティング費用は以下のとおりである。
新規ユーザー確保やエコシステム活性化のための初期マーケティング費用
SK Planetは現在、出来るだけ多くの新規ユーザーを確保すべく、初期ユーザーに対し、破格の特典を多数提供している。例えば、Road to Richユーザーを対象に40日間のミッションイベントを開催し、参加者のうち毎日1人を抽選して300万ウォン相当のハワイ旅行商品券、ファインダイニング食事券、0.35 $AVAX相当のウェルカムギフト、「バーガーづくり」など体験型の無料ポイントイベントなどを展開している。エコシステムの活性化やリテンションのために、当分は上記と類似したイベントを持続的に展開するものとみられる。
円滑なユーザー経験のために肩代わりするガス代
SK Planetは、Road to Richの参加者に円滑なユーザー経験を提供すべく、彼らのオンチェーン活動にかかるガス代を全額肩代わりしている。UPTNチェーン内のネットワーク手数料の支払い手段として使用されているUPTNトークンは、市場価格が存在しないため(流通されないトークン)、ガス代の規模を直接把握することはできないが、活性度が最も高いサブネットの1つであるDFK(Defi Kingdoms)を基準に計算すると、大体の数字は求められる(あくまで推定値であり、fee config/dynamic fee algorithm parameterなどが異なる場合は実際の数値と相違する可能性がある。なお、$JEWELトークンの価格を基準にUPTNチェーンのガス代を推定していることも考慮すべきである)。
DFKチェーンのブロック#24542773のデータを確認した結果、24,801,789 gasの使用におおよそ0.49JEWEL、または0.04ドル(11月8日付の$JEWEL基準、約0.1ドル)がガス代として消費された。10月27日~11月2日の7日間、UPTNチェーンは平均として約35.45B gasを使用していて、DFKチェーンで発生するガス代をここに代入すると、SK Planetが肩代わりしている日間平均ガス代は57ドル(ウォン換算で約7.4万ウォン)になる。UPTNチェーンブロックの生成者数は計10人であり、そのうちSKが運営しているノード数は1個、Ava Cloudが9個である。各ノードのステーキング比率が公開されていないため、全員が同量のトークンをステーキングしていると仮定すると、SK PlanetはAva Cloudノードに約51ドルを支払っていると仮定できる。つまり、同様のネットワーク活性度を1年間維持すると、SK Planetが肩代わりするガス代は約18.8Kドル(ウォン換算で約2,400万ウォン)、UPTNチェーンの活性度が5倍増加すると93.9Kドル(1.2億ウォン)、10倍増加すると約187.8Kドル(2.5億ウォン)が費用として発生する。
上述したように、SK Planetは現在、エコシステム活性化のために多様な特典を提供しているうえに、ユーザーのトランザクションガス代を肩代わりしているため、短期的には損失が発生しているが、長期的には売上と収益性の二兎を得られる構造を形成することを目標としている。
従来のOK Cashbagの収益構造は、加盟店とユーザーから取得する手数料程度だが、将来的には以下のようなバリューチェーンの拡張やビジネスの多角化を通じた成長が見込まれる。
・ 広告収益:従来の収益構造と同様
・ ネットワークネットワーク手数料(UPTNチェーン/インフラ):現在はSK Planetがユーザーのガス代を肩代わりしているが、将来的にはバリデーターがユーザーからネットワーク利用手数料を取得できるものと予想
・ ウォレット手数料(UPTNステーション/ウォレット):UPTNステーション内のFT/NFT送信またはスワップの際に 手数料を取得
・ コンテンツ取引手数料(NFTマーケットプレイス):TEM、チケット、クーポン、グッズ、メンバーシップなどコンテンツの決済・リセール取引の際に手数料を取得
・ IPグッズ販売(OSMU):Rackyまたはその他IPのグッズ販売収益
・ パブリッシャー収益:外部NFTプロジェクトの流通による収益
・ 金融サービス利用手数料:ローン、レンディング、ファーミング、ステーキングなどDefiサービス利用手数料
技術は、それ自体で存在するときより、それを基に有意義なサービスが誕生し、多くの人々に使われてはじめて本領を発揮できる。ブロックチェーンも例外ではない。インフラの発展も重要であるが、それを活用した有意義なサービスの誕生が欠かせない。
こういった面で、筆者は韓国のブロックチェーン市場の未来に大いに期待している。韓国ほどリテール市場が発達していて、大手企業までブロックチェーンビジネスに本腰を入れている国は数少ないからだ。
企業がブロックチェーンを単にマーケティングの手段として捉え、むやみにトークンをばら撒いていた時代はほぼ終わった。韓国の大手企業は、なぜブロックチェーンを使うべきか、この技術を従来のビジネスモデルとどのように融合してこそ価値があるかについて、いつにも増して真剣に悩んでいる。
ブロックチェーンという新しいアンダードッグ技術とエコシステムに対する彼らの理解は日増しに高まっており、それを基に慎重ながら地道にビジネスの準備を進めている。SK Planetもその一員であり、彼らの挑戦を心より応援したい。
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・本レポートは、Xangleが作成に協力しています。Xangleや筆者は、本文中で触れている暗号資産を保有している可能性があります。こちらのレポートに書かれている見解は、筆者の個人的なもので、情報提供のみを目的としています。トークンの売買やプロトコルの利用を推奨するものではありません。また、本レポートは投資アドバイスではないことをご留意ください。
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