MODHAUSとtripleSにおけるアイドルのブロックチェーン活用について

本レポートは、韓国の芸能プロダクションであるMODHAUSとその所属グループtripleSに関するものです。ブロックチェーン技術と関係がないと思われがちですが、MODHAUSはNFTやトークンを活用してtripleSの運営を行っています。

ファンはトークンを使って投票を行い、その結果に基づいてtripleSの活動方針を一部決定することができます。ブロックチェーンはPolygonを採用しており、アプリ内で簡単に誰でも投票が可能です。また、NFTもアプリ内で交換が可能で、メタマスクのようなウォレットを準備する必要はありません。

本レポートでは、MODHAUSおよびtripleSの基本概要、これまでの投票結果、データ分析などを詳しく解説しています。

tripleSに関する情報を簡単に図解すると、上記のようになります。

tripleSのファンたちは、COSMOというアプリを中心にtripleSに関与していきます。COSMOのメインコンテンツの1つとして、ファンがtripleSの方向性に投票で関与することが可能となっています。投票の要素が、NFT（objekt）やFT（COMO）が機能していく形となっています。

• MODHAUS：芸能プロダクション、tripleSの事務所
• tripleS：24名からなるK-POPグループ。メンバーは、ソロ、サブユニット、チームとしてパフォーマンスをする。
• DIMENSION：各ユニットに対する名称
• Gravity：ブロックチェーン技術を採用した投票システム
• COSMO: the origin：MODHAUSが提供しているアプリケーション。デジタルアイテムの管理、投票などがここで行われる。
• objekt：フォトカード NFT。イベント参加などでObjektsを獲得または、アプリ内購入するが可能。他のユーザーと交換も可能。
• COMO：投票権（ガバナンストークン）。Gravityで投票が可能になる。
• ファンダム：ファンたち（集団）のことを指す。

画像出典：https://www.mod-haus.com/

MODHAUS（モードハウス）は、2021年12月に設立された韓国のエンターテイメント会社です。この事務所は、tripleSなどのアーティストが所属しており、特にWeb3技術を活用した革新的な運営方針で注目を集めています。

MODHAUSの最大の特徴は、ファンが所属アーティストの活動や決定に直接関与できるシステムを採用している点です。専用アプリ「COSMO: the origin」を通じて、ファンはアーティストの運営に参加し、消費者としてだけでなく、決定者としての役割を担うことができます。例えば、このアプリを利用して、ファンの投票によりタイトル曲やファンダム名が決定されるなど、ファンの意見が直接反映される仕組みが導入されています。

このように、ファンの役割を大幅に拡大することにより、MODHAUSは従来の芸能事務所とは一線を画す存在となっています。さらに、ブロックチェーン技術を活用することで、投票などの運営の透明性を確保し、ファンとアーティストの信頼関係を強化しています。

※ファンダム名：ファンたちの名称 例 ”BTS：ARMY” “ラーメン二郎：ジロリアン”

MODHAUSの特徴として、ブロックチェーンを活用した投票システムがあります。これまでもファン投票システムは多くのエンターテイメント分野で採用されてきました。

例えば、日本の有名な例としてはAKB総選挙が挙げられます。AKB総選挙では、公式ファンクラブ会員やシングルCD購入者に投票権を与える形で進行していました。このようなファン投票システムは、K-POPの世界でも広く採用されています。

しかし、今回MODHAUSが提供するシステムは一歩進んだものとなっています。MODHAUSは、ブロックチェーン技術を活用することで、投票の透明性を確保し、結果を恣意的に変えることが不可能となる仕組みを導入しています。これにより、どのユーザーがどれだけ投票したかも明確に把握できるようになっています。

さらに、MODHAUSのシステムはNFT（objekt）とトークン（COMO）を活用しており、従来のファン投票システムの根底にある仕組みを保持しつつ、ブロックチェーン技術を取り入れることでより高度なものへと昇華しています。このような技術の導入により、ファンとアーティストとの関係がより緊密になり、信頼性の高い運営が実現されています。

上記にも記載した通り、MODHAUSは、ブロックチェーン技術を活用して独自のガバナンスシステムを構築しています。

tripleSのファンは、少なくとも1つのCOMO（トークン）を取得することで、tripleSの方向性を決定する投票に参加できます。このシステムにより、ファンはグループの活動に対して直接的な影響力を持つことができます。

特に注目すべきは、Gravityと呼ばれる投票システムの透明性です。投票に使用されたCOMOの量などは、誰でも確認できるようになっています。これにより、投票結果の透明性と信頼性が確保され、外部からの客観的な評価も容易になります。

MODHAUSは、Polygonブロックチェーンを活用しており、COMOは専用アプリ内（COSMO: the origin）で、Objektsを獲得または購入することで取得できます。COMOを多く所有するユーザーは、その分多く投票でき、結果に大きな影響を与えることができます。これは従来の投票システムと似ていますが、ブロックチェーン技術の導入により、誰がどれだけ投票したのかが明確にわかるようになっています。

画像出典：https://apps.apple.com/us/app/cosmo-the-gate/id1617337069

最近のGravity投票では、2024年6月17日から18日の期間に323,676のCOMOが使用されました。この中で、最も多くCOMOを消費したのはDeee氏で、10,448COMOを使用しました。この透明性と改ざん不可能なシステムにより、ファンからの信頼を得やすくなっています。

さらに、従来の投票システムでは、公表された情報しか外部に伝わりませんでしたが、MODHAUSのシステムではブロックチェーン技術を活用することで、より客観的な情報が外部（ファン以外）にも伝わりやすくなっています。

投票に使用された、COMOはバーンアドレスに送付されているので、バーンされているという認識になります。下記のPolygon Scanをご確認ください。

https://polygonscan.com/tx/0xd3f7d47ec4cdf6922aef45bf4033723922550e5719a5ade39de8b4858247bb11

画像出典：https://www.triples-official.jp/

tripleSは、MODHAUSの最初のK-Popガールグループで、合計24人のメンバーで構成されています。各メンバーにはS1からS24までの番号が振り分けられ、グループ、ソロ、サブユニットなどの形でも活動しています。

各ユニットは「DIMENSION」と呼ばれ、その構成はファンの投票によって決定されます。これまでに、いくつかのユニットの構成が投票を通じて決定されました。

tripleSには、カエデ、コトネ、マユ、リンという4人の日本人メンバーも含まれており、日本でも積極的に活動しています。このように、多国籍なメンバーで構成されるtripleSは、グローバルなファンベースを築くことを目指しており、その活動範囲も広がっています。

[各種リンク]

• Website / https://www.triples-official.jp/
• YouTube / tripleS official
• X / tripleS official
• X / tripleS official JAPAN

画像出典：https://apps.apple.com/us/app/cosmo-the-gate/id1617337069

OSMO: the originは、MODHAUSが提供する公式アプリで、スマートフォンで操作が可能です。

このアプリは、tripleSに関する情報を取得できるポータルアプリとしての機能を備えており、ファンがtripleSの最新情報や活動内容を簡単にチェックすることができます。

前述した通り、このアプリの主要な機能の１つは、tripleSに関連する投票システムです。ファンは、このアプリを通じて投票を行い、グループの活動や方向性に影響を与えることができます。

また、COSMO: the originでは、「objekt」と呼ばれるフォトカードNFTを購入することが可能です。1パック400円で購入でき、決済は法定通貨で行うことができます。objektを獲得すると、COMOというトークンが手に入り、このトークンを使って投票に参加することができます。

さらに、このアプリには、フォトカードNFTを活用した二次創作を投稿するソーシャル機能も搭載されています。ファンは、自分の創作物をアプリ内で共有し、他のファンと交流することができます。これにより、ファン同士のコミュニケーションが活性化し、コミュニティの一体感が高まります。

MODHAUSのプロジェクトが成功している要因は、資金調達やガバナンスシステム、ブロックチェーンの活用方法など多岐にわたりますが、最も重要な要因はCOSMO: the originアプリにあると考えられます。このアプリには、以下の点で優れた特徴があります。

1. ブロックチェーンを意識させないUI/UX

COSMO: the originのUI/UXは、既存のアプリと変わらない使いやすさを提供しており、ユーザーにブロックチェーン技術を意識させない設計となっています。これにより、テクノロジーに不慣れなユーザーでも安心して利用できます。

2. 法定通貨での決済

objektの購入は、決済手段が暗号通貨ではなく法定通貨を採用している点も大きな利点です。アップルの手数料が問題視されることがありますが、これはユーザーの利便性を最優先に考えた結果と言えます。

例えば、デジタルフィギュアプロジェクトのVeVeも同様の戦略を採用しており、成功を収めています。重要なのは、ユーザーが使いやすい環境を提供することです。

3. Gravityの透明性

COSMO: the originでは、Gravityと呼ばれる投票結果をPolygon Scanで確認することができます。これにより、どれだけのCOMOが消費されたのかをリアルタイムで透明に把握することが可能です。

このように、ユーザーが関心を持つポイントを押さえつつ、ブロックチェーンの有効性を活かしている点が非常に優れています。

4. 基本クオリティに +α

メンバーの魅力、楽曲の質、ダンスのクオリティといった点は現在のK-POPグループに共通する強みです。しかし、これに加えてCOSMO: the originアプリの存在が、tripleSのプロジェクトを一層魅力的なものにしています。

要するに、COSMO: the originアプリは、ユーザーにとっての使いやすさと透明性を両立しつつ、ブロックチェーン技術の利点を最大限に活かした革新的なプラットフォームです。このアプリの成功が、MODHAUSのプロジェクト全体に大きく寄与していると考えられます。ユーザーにとって何が使いやすく、グループが発展するために必要なことを第一に考える姿勢が、MODHAUSの成功の鍵となっているのです。

データ元：COSMO: the origin

最も多くの投票数を集めたイベントは「Grand Gravity: Visionary Vision Day2」で、323,676 COMOが投票されました。このイベントの内容は、新しいDIMENSION（ユニット）に参加する最終メンバーを決定するための投票でした。

一方、最も少ない投票数は10,758 COMOの「Our First Grand Gravity」で、tripleS初のDIMENSION（ユニット）を決めるための投票でした。

投票内容によって投票数は変動しますが、最近のイベントでの投票数が最も多く、初期のイベントでの投票数が最も少ないという結果は、グループの認知度が徐々に成長していることを示唆しています。これは、ファン層の拡大とともに、投票への参加意欲も高まっている可能性を示しています。

objekt 発行数・ホルダー数

画像出典：https://dune.com/hashed_official/triples

objektの現在のホルダー数、発行数は上記のようになっています。約14万人のユーザーが、objektを所有しています。この人数が、COSMO: the originで投票可能な人数と考えられます。（※tripleS以外も含む）

objektの発行推移

画像出典：https://dune.com/hashed_official/triples

Objektの発行推移を見てみると、右肩上がりで増加していることがわかります。

5月にミント数が増加した要因としては、「ASSEMBLE24 Performance Video」というGravity（投票）が行われたことと、ObjektのShop Special Eventが開催されたことが考えられます。

「ASSEMBLE24 Performance Video」のGravityでは、新しいパフォーマンスビデオの曲を選ぶというものでした。ファンダムが選んだ曲のパフォーマンス映像が撮影されるという内容で、多くの票が集まりました。これが、Objektの発行数増加の一因となっていることが考えられます。

objektのホルダー推移

画像出典：https://dune.com/hashed_official/triples

Objektのホルダー数は、綺麗な右肩上がりの推移を見せています。この数値はアクティブユーザー数ではないため減少することはありませんが、横ばいの期間が少ない点が好印象です。

もしこの数値が横ばいになってくると、成長が停滞している可能性を示唆することになりますが、現状では順調に増加していると考えられます。

また、Gravityの投票数が上がっていることも、ホルダー数の増加に寄与していると見られます。投票活動が活発であるほど、ホルダー数も比例して増加していく可能性は高いと言えます。

最後に資金調達に関して、記載をしておきます。これは前述したCOSMO（アプリ）の出来と同じくらい重要な要素として考えられます。

MODHAUSは、UNOPNDからシードラウンドで投資を受けています。その後、プレAラウンドでは、NAVER D2SF、TIMEWISE INVESTMENT、FuturePlayなどが参加したと言われています。

そして、シリーズAラウンドで800万ドルを調達しました。このラウンドの投資家には、Sfermion、SM Culture Partners、Laguna Investment、KDDI Open Innovation Fund III、Foresight Venturesが含まれています。

MODHAUSは、一般的な芸能プロダクションというより、ブロックチェーンを活用したプロダクトとして、よりベンチャー企業寄りの動きをしているように見えます。この特徴から、売れる前から所属アーティストに資金を注ぎ込むことが可能となっています。もちろん、COSMO（アプリ）にも資金が投下されたことが考えられます。

この資金調達により、余裕のある運営が可能になっていると考えられます。MODHAUSの成功には、このような資金調達による経済的な安定性が大きく寄与していると考えられます。

ブロックチェーンを活用することで、MODHAUSはこれまでの芸能プロダクションとは異なる動きと結果を見せています。

資金調達、アプリ開発、NFTの活用、FTの活用といった様々な側面で、従来の芸能プロダクションとは一線を画しています。データから見ても、MODHAUSは好調な結果を出しているため、このシステムを雛形にして参考にするプロジェクトも出てくる可能性が考えられます。

tripleSをはじめ、MODHAUSに所属する他のアーティストも今後、さらなる成功を収める可能性があります。これからの動向に注目していきたいと思います。

このレポートを執筆している期間、筆者はtripleSの曲をループでずっと聞いていました。10曲ほど様々な曲を聞いた中で、一番耳に残ったのは「Rising」でした。

「Rising」は、アルバムのタイトル曲を選ぶ投票イベントで優勝した曲です。このイベントでは、ファンたちが投票を通じてタイトル曲を決めるという形式が取られました。

あるファンが最後の数時間で1,272 COMOを使用して「Rising」（当時Song B）に投票し、タイトル曲を変えたというエピソードが語られています。

筆者にとって耳に残る曲であることから、こうしたブロックチェーンを活用した透明性のある投票システムに可能性を感じることができました。ファンの意見が直接反映されるシステムは、公正で透明性が高く、より一層ファンとのつながりを深めるものと感じられました。

https://www.mod-haus.com/

https://www.triples-official.jp/

https://x.com/triplescosmos

https://x.com/tripleS_JAPAN

https://www.youtube.com/channel/UCJnL-TBcsYrF2SLs7tmiC8Q

https://medium.com/@modhaus

https://apps.apple.com/us/app/cosmo-the-gate/id1617337069

https://dune.com/hashed_official/triples

https://www.theblock.co/post/262780/south-korean-web3-k-pop-agency-modhaus-raises-8-million-in-series-a-round

https://www.korit.jp/news_mirakleahead_modhaus_unopnd

https://note.com/lash_triples/n/n5249bd4f2722

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